二人だけの朝食は、いつものようにテレビを消して話しながらとる。消化に良いといわれているが逆の場合もある。最近はほぼ巣ごもり状態で人に接する機会が少ない。どうしても、事件や社会問題が話題の中心になる。これがいけなかった。見解の相違でケンカになる場合が多いのだ。
「救急車で病院に連れて行かれても、帰りが大変だよね」
「命が危ないのに帰りの心配するのですか」
「入院できなかったら大変でしょ」
「なんとかなりますよ」
「病気なのに可哀そうでしょ」
「タクシーを呼べばすむ事です」
「夜中でタクシーは来ないのよ」
「救急車は負傷者や急病人を病院に運ぶ為にあるのです」
「困っている人を助けたっていいじゃない」
「救急車の仕事ではありません」
「なによ偉そうに。もうペッタンコしてやんない!」
河川敷なぜか一人でペッタンコ淋しくないの土曜日の君
何が気に入らないのか、もう貼り薬をはってくれないと言うのだ。散々な朝ご飯になってしまった。その日は体調が良いので、久しぶりに部屋の整理をした。休み休みの作業だが、夕方になると腰が痛くなった。
「腰にこれを貼ってくれませんか。手が届かないのです」
「貼って上げないって言ったでしょ」
おや、覚えている。意外に執念深いなと思ったが、心配はない。私には奥の手がある。「ハリハリ失敗作戦」だ。自分で貼って、失敗するところを見せれば、テキは我慢ができなくなって、口を出したり手を出したりしてくるに決まっている。善は急げ、さっそく実行。
「なにやってんのよ、あんた! もったいないじゃない」
「ごめんなさい、又失敗。今度こそ上手くやります」
「もう、いいよ」
「何がですか?」
こうして作戦は成功したが、貼り薬2枚の損害をこうむった。クチャクチャにくっついて、使用できなくなってしまったのだ。不幸なことだが勝利の陰には尊い犠牲がある。
ところで「一人でペッタンコ」という製品がある。背中など貼りにくい部分にも、ひとりで湿布が貼れるそうだ。税込1025円だが、不器用な私では使いこなせないと思う。やっぱり貼ってもらいたい。
タグ:楽しい我家