2019年04月20日

幸せは外にある

2007年10月の中島公園は「サクラマス遡上騒動」で大喜びだった。こんな話は聞いたことがないし、二度と起こらないだろう。現にあれから12年たつのに起こる気配もない。遡上なら川を上るはずなのに下ってきている。それでも皆喜んでいた。
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中島公園に現れたサクラマス。

しかし、サクラマスの死骸をカラスが突っつくのを見かけるようになってからは人々の反応は変わってきた。このまま放置してはまずいのではないかと。
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10月に入るとサクラマスの死骸があちこちで見られるようになった。

滅多にない珍事なので「鴨々川に迷い込んだサクラマス」について一部始終をウェブサイトに記録した。それはさておき、取材中に悔しいこと楽しいこと、いろいろあった。

サクラマスを驚かさないように、そおっと写真を撮っていると、後ろから声がする。
「あ〜、だめだめ。 もっと姿勢を低くしないと」
振り向くと年配だが、かなりお洒落な女性が立っている。二コリともしないで見ず知らずの私に上から目線で指示するのだ。文字通り上からね。

「私、写真屋に勤めていたのよ。カメラ持ってこなくて残念だわ。低くしないと水面が反射して写らないよ。腰が高すぎるよ、もっと低く!」
こちらはモニターを見ながら撮っているので、反射しているかどうかは言われなくても分かるのだ。それでも彼女は指示を連発する。もしかして私は奴隷オーラを発散させていたのかも知れない。だから人様は私の動作を見ると何か命じたくなるのだ。

「もっと低く、水面ギリギリで撮るのよ」
無茶を言っちゃー困る。そんなことできる訳がない。身体は固いし腰痛持ちだ。しょうがない。終わったフリして立ち上がることにした。

「あら、もう帰るの?」
”あなたがいたのでは落ち着いて写真も撮れません”と言いたいのはやまやまだが、口から出さずに飲み込んだ。

「いろいろご指導ありがとうございます。きっといい写真が撮れていると思いますよ。こちらがホームページのアドレスです」と言って名刺型のチラシを渡す。どんなに悔しくても、これだけは忘れない。当時はアクセスもバンバンやる気モリモリ、宣伝活動に余念がなかった。あのころ私は若かった。気持ちだけね。

「そ〜ぉ。これからなのにぃ」
しばらく木の陰に隠れて、彼女が立ち去るのを見届けることにした。

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サクラマスが来た地下鉄幌平橋近くの鴨々川。足元のサクラマスを撮る人。

「さあ、撮るぞ!」と再び川に近づくと、今度は違うおばさん。
サクラマスをじっと見て「美味しそうだね」と一言。
「食べちゃダメだよ」
とモンクを言ってやった。江戸の敵を長崎で討つ!
「食べられないよ〜。 私、獲れないから〜。 ワハハハハハ、ワ〜ハッハ〜、ワ〜ハッハ〜、ワ〜ハッハ〜、ワ〜ハッハ〜、ワ〜ハッハ〜、あ〜疲れた」
サクラマスはなかなか撮れなかったけれど、思いがけず笑いが取れてしまった。
しかも極めて簡単に。笑う門には福来る、先ほどの嫌な気分は吹っ飛んだ。

家に帰ってつぶやく。 
「大笑いすると気持ちがいいかも知れなせんね」
「そんなこと出来るわけないでしょ」
疲れるまで笑ってくれる、あの人を思い出しながら……。
「そうですね。つまらないことを言いました」
黙々と飯を食う。幸せは外にあると思いながら。
posted by 中波三郎 at 00:00| Comment(0) | 自由時代(61-74歳)
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