「オレオレ」と言われて何故か嬉しかった。私は居るのか居ないのか分からない人。ハナちゃん、タロちゃんの世界でも私だけは中波さんと呼ばれ他人行儀だ。何となく寂しい状況が見えて来ると思う。多分面白味がないから親しめないのだろう。
ところで、なぜオレオレかと言うと、カラオケで偶然「俺は待ってるぜ」と「霧笛が俺を読んでいる」を歌ったら”オレオレちゃん”と声がかかったからだ。寂しさを胸に抱いていた私は嬉しくなり、つい調子に乗って「俺は寂しいんだ」もやってしまった。しかし、ここまではイントロの部分、本当に歌いたいのは「俺はお前に弱いんだ」。いつの日かカラオケ会で歌ってみたいと思っている。
「なんでシニアネットのカラオケ会なんだ」
「そこが私にとって最高の舞台だからです」
「他にも行っているのか?」
「はい、4人でね。そこでは私が一番若いのです」
「なんだ、年寄ばかりか」
「そうなんですよ。自然減が寂しいですね」
「しぜんげん?」
「はい、最近お亡くなりになった方も居られます」
ともかくカラオケ会で「俺はお前に弱いんだ」を歌い、あの名セリフを言ってみたいのだ。
ところで、なぜオレオレかと言うと、カラオケで偶然「俺は待ってるぜ」と「霧笛が俺を読んでいる」を歌ったら”オレオレちゃん”と声がかかったからだ。寂しさを胸に抱いていた私は嬉しくなり、つい調子に乗って「俺は寂しいんだ」もやってしまった。しかし、ここまではイントロの部分、本当に歌いたいのは「俺はお前に弱いんだ」。いつの日かカラオケ会で歌ってみたいと思っている。
「なんでシニアネットのカラオケ会なんだ」
「そこが私にとって最高の舞台だからです」
「他にも行っているのか?」
「はい、4人でね。そこでは私が一番若いのです」
「なんだ、年寄ばかりか」
「そうなんですよ。自然減が寂しいですね」
「しぜんげん?」
「はい、最近お亡くなりになった方も居られます」
ともかくカラオケ会で「俺はお前に弱いんだ」を歌い、あの名セリフを言ってみたいのだ。
「しょうがない娘だな甘えてばかりいて…」
とかね。この考えを先輩に話すと、
「いいじゃないか。ちょっとふざけて言えば笑いが取れるかも」
「このセリフは心を込めて語りたいのです。愛しているから不幸にしたくない。こんな想いを表現できればと思っています」
歌が下手だから笑って楽しんでもらおうと言う発想は先輩も私も同じだが、アプローチの仕方がぜんぜん違う。それに私は大勢の前でふざけたり出来ない性格だ。例えば、映画「男はつらいよ」の寅さんは大真面目で恋を語り愛を語ったり、似合わないことばかりして観客の笑いを誘っている。私の狙いはそこにある。
自慢じゃないが寅さんよりモットモットみったくない。その私が格好つけて、「しょうがない娘だな甘えてばかりいて…」とか、キザなセリフを言えば、それだけで笑いの渦が巻き起こり、場が盛り上がるのではないか。
「それで…、実行したのか?」
「慎重かつ前向きに検討しているところです。笑いを取るのは簡単ではありません」
「まだやってないんだな。そりゃ良かった」
「はい、頑張ります」
「ダメダメ止めときな」
「いいじゃないか。ちょっとふざけて言えば笑いが取れるかも」
「このセリフは心を込めて語りたいのです。愛しているから不幸にしたくない。こんな想いを表現できればと思っています」
歌が下手だから笑って楽しんでもらおうと言う発想は先輩も私も同じだが、アプローチの仕方がぜんぜん違う。それに私は大勢の前でふざけたり出来ない性格だ。例えば、映画「男はつらいよ」の寅さんは大真面目で恋を語り愛を語ったり、似合わないことばかりして観客の笑いを誘っている。私の狙いはそこにある。
自慢じゃないが寅さんよりモットモットみったくない。その私が格好つけて、「しょうがない娘だな甘えてばかりいて…」とか、キザなセリフを言えば、それだけで笑いの渦が巻き起こり、場が盛り上がるのではないか。
「それで…、実行したのか?」
「慎重かつ前向きに検討しているところです。笑いを取るのは簡単ではありません」
「まだやってないんだな。そりゃ良かった」
「はい、頑張ります」
「ダメダメ止めときな」
と、先輩は私の名案にいつも水を差す。
「はぁ? なんでですか」
「シーンと静まり返ったらどうするんだ」
笑いの嵐でも感動による静粛でも、どちらでも良いではないか。肝心なのは感動を与えることである。仮に心から感動して胸をときめかせた方が居たとしても、私はそれでいいと思う。笑い・泣き・胸をときめかせてこその人生ではないか。
「ところで、自分より下手な歌を聴いたことあるのか?」
「全然ありません! みんな凄く上手いのですよ」
「それが何を意味するか良く考えるんだな」
良く考えたら分かった。何ということもない。私が一番下手なのだ。しかし分かるまでの道のりは長かった。自分が経験しないことを、頭だけで理解することは難しい。
「分かりました。何もセリフなんかで工夫する必要はないですね。今のままでもかなり可笑しいのに誰も笑いません」
「そこが肝心だ。寒気がして笑えないんだよ」
下手な歌を聴かされるのは辛いことらしい。爺さんが幼児のように真剣に歌っている姿が目に浮んだ。聞いている方は笑うどころか、恥ずかしくて凍り付くかも知れない。「俺はお前に弱いんだ」のセリフなどを入れたら、我慢の限界を超えて爆発するかも知れない。おお怖い。怖い怖い。
「はぁ? なんでですか」
「シーンと静まり返ったらどうするんだ」
笑いの嵐でも感動による静粛でも、どちらでも良いではないか。肝心なのは感動を与えることである。仮に心から感動して胸をときめかせた方が居たとしても、私はそれでいいと思う。笑い・泣き・胸をときめかせてこその人生ではないか。
「ところで、自分より下手な歌を聴いたことあるのか?」
「全然ありません! みんな凄く上手いのですよ」
「それが何を意味するか良く考えるんだな」
良く考えたら分かった。何ということもない。私が一番下手なのだ。しかし分かるまでの道のりは長かった。自分が経験しないことを、頭だけで理解することは難しい。
「分かりました。何もセリフなんかで工夫する必要はないですね。今のままでもかなり可笑しいのに誰も笑いません」
「そこが肝心だ。寒気がして笑えないんだよ」
下手な歌を聴かされるのは辛いことらしい。爺さんが幼児のように真剣に歌っている姿が目に浮んだ。聞いている方は笑うどころか、恥ずかしくて凍り付くかも知れない。「俺はお前に弱いんだ」のセリフなどを入れたら、我慢の限界を超えて爆発するかも知れない。おお怖い。怖い怖い。
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