2023年02月25日

奥さんの話

共同住宅に住んでいるので住民は1階の郵便受けまで新聞を取りに行く。朝5時半ごろに来るがときどき遅れることがある。たいていの人は部屋に帰って出直すが、私とAさんだけは帰らないで新聞が来るのを待っている。Aさんは私と同年輩でマンション管理についてよく勉強している。総会では積極的に発言するが普段は穏やかな話好きな人だ。

IMG_0134.jpeg

ロビーのソファに座って新聞を待っているのは二人だけなので、退屈凌ぎにいろいろな話をするようになった。たいていは近所の中島公園とか、いわゆる時の話題だが、その朝は珍しく奥さんの話になった。
「あの方が奥さんなのですね。先日ご一緒に歩いているのを初めて見ましたよ。綺麗な方ですね」
「何をおっしゃるのですか。顔は皺くちゃ頭は白髪です」

こういわれては返す言葉もない。「見ましたよ」だけでは愛想がないと思って「綺麗な方」を付け加えてしまったのだ。昔、尊敬する先輩がよく別れ際に「美人の奥さんによろしく」と言った。そのノリが移ったのかも知れない。返答に窮しているとAさんは話し始めた。

「家内は背が低く、年の割には顔が小さいのですよ。目がパッチリしているので、可愛いと言えば可愛いですね。だけど、髪が薄くダンゴッパナで皺があります」
「そうなんですか。ぜんぜん気づかなかったです」

「川柳で『老妻も角度変えれば美人なり』というのがありますが、これは本当だなと思いますよ。ところが、怒ると酷くて見ていられないですよ。ぶすっとしているからブスとか言いますが、ホントですね」
「川柳って面白いですね」
「私は家内の仏頂面が嫌いですから怒らすようなことは滅多にしません。家内が間違ったことを言っても逆らわないようにしています」
「そうですか。奥さん幸せですね」

「おや、新聞来たようですよ」とAさん。
「今朝は時間がたつのが早いですね」
「そうですか」
「ご馳走様」
「はぁ?… (>_<;)
タグ:ときめく
posted by 中波三郎 at 00:00| Comment(0) | その他
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: