後で考えれば、鯉全滅の前兆はあった。2006年初頭、百羽を超えるカモがN公園上空を彷徨っていた。飛んでるカモのせいで薄暗く感じたほどだった。カモ川が氷結して、カモの大群が水場を求め、狂ったように飛び回っていたのだ。
この異常事態を記憶に残したいと思い、貴重な写真として別に保存した。結局、大事にし過ぎて見失った。手元に残ったのはウェブ用に縮小した画像だけ。1枚の写真に百羽以上写っていたが、縮小したら点になった。一部を切り取ったのがこの画像。やや首長でカモ(マガモ)の特徴が伺える。
コチンコチンに氷結したカモ川の表面には足跡も見える。
異常事態は新聞社も知ることになり、2枚の写真と共に大きく報道された。「水場消えカモ受難」と言う見出しだった。河川工事の影響で川が凍ったのが原因かも知れない(住民談)と書かれていた。
画像は2006年1月6日の北海道新聞。参考のため一部分を撮影して掲載。このような事実もあり、私が目にした事実もある。それらを参考に、曖昧な部分は推測して書いてみた。
小さな水場が地下鉄H駅近くのカモ川に残された。そこに群がるカモに気を取られ、S池の底で音もなく進行していた悲劇には、全く気が付かなかった。表面氷結したS池でも水は静かに流れている。流れが止まれば鯉は酸素欠乏死する。工事関係者に生き物についての配慮は、あったのだろうか?
エサを求めてカモはカモ川の僅かの水場から、地下鉄H駅方面に上って来た。空を飛べるカモには水場とエサを求めて移動する自由がある。一方、氷で閉ざされた池の底では鯉絶滅の危機が刻々と迫っていた。
温かい時期ならホースで流れる水が少なくても、S池の鯉は生存に必要な酸素を得ることができる。鯉は水面に顔を出し、空気と水を一緒に吸い込むことで酸素を得る。
しかし、厳冬期になれば話は別だ。果たして、ホース内の水は順調に流れていたか? 鯉全滅の原因は病気等いろいろあるが、当局の説明もマスコミの報道もなかった。2006年春、散歩のオバさんは「酸欠で鯉が皆死んじゃったのよ」と言った。私も2006年と2007年は一匹の鯉も見ていない。
不都合な事実は関係者によって隠蔽される場合も少なくない。人々は大なり小なり、理不尽な事実に遭遇する。それが人知れず消え去ることに、我慢できない。そして、人に話したり書いたりするが、話題が広がることは稀である。殆どの不都合な事実は無かったことにされる。
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